テント個人輸入記⑦ポールを拾った男

By Nomadでオートキャンプ - 5月 29, 2018




ある朝、男は大きなダンボール箱を拾った。



男は箱をあけた。



テント用のインナーとポールとグラウンドシートが入っている。
だが肝心のフライシートは見当たらなかった。





男は、野心に駆られるまま、このポールとグラウンドシートが
フィットするテントを探して世界中を旅した。

海を渡り砂漠を超え森をさまよったが、
どうしてもピッタリのフライシートは見つけられなかった。

長い時間がたち、年老いた男は、
このポールとグラウンドシートにあわせてフライシートを特注した。


ある静かな星の降る夜、男はテントを設営した。
すると、まばゆい光の中から美しい女神があらわれ、こう話した。

「どうしてもっと早くフライシートを作ってくださらなかったの?
さあ、お金でも名誉、恋でもあなたの望みをなんでも叶えてあげます。」


男はチェアに腰掛け、焚き火をみながらこう答えた。

「なにもいらない。今の私に必要なのは思い出だけだ。それは持っている。」







星新一 妄想銀行 「鍵」へのオマージュ

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