天敵とバックパックキャンプ(一の瀬高原キャンプ場・その②招かれざる客)

By Nomadでオートキャンプ - 5月 21, 2019

設営がとりあえず完了し、薪集め。 
しかし、なぜかしら場内にほとんど枝が落ちておらず
思いの外手間がかかった。
荷物運搬で疲弊した体には厳しい作業であった。
この日のために調達したウッドストーブに
早速拾ってきた小枝を投入。 

・・・躊躇なく着火剤を利用した。

渓流で汲んだ水でお湯を沸かし、 
これまた新規調達したテーブルで、

お目当てのこれである。 

シエラカップとサイズがあわないので
小枝に助っ人を頼む。

一方ヤツは、 
穴ほり式直火である。

生意気にもファイアスタータでの着火を成功させていた。
男「・・・なぜ裸足なのか?」
ヤツ「・・・何か?」

・・・話が噛み合わないので男は詰問を諦め
見て見ぬふりを続けざるを得なかった。

 
直火も順調に湯を沸かしていた。

ヤツご自慢の小型鉄板。
単独行なら充分なパフォーマンスだった。
ただ、活きのいいソーセージ氏1名が
大地の神への捧げ物になっていた。

新兵器たる
このウッドストーブ、

安定稼働後は見事な二次燃焼が確認できた。



・・・日暮れが迫る。
 

いつもの三岳。
ヤツとは長い友である。


・・・電気のない世界。
直火ですら立派な光源となる世界。


炎の赤みで仄かに映しだされた木々。 

男が友から贈られたオイルライターの
灯りが頼もしい世界。


・・・背後に広がる深い闇が、
この場所に存在する資質や能力があるのかを、
旅人に絶え間なく問いかけてくる。

すくなくともこの地で、
旅人が簡単に歓迎される存在では
決してないことを思い知らされる。

そう、我々は招かれざる客なのだ。

・・・そんな張り詰めた静謐の中、
ヤツも男も言葉をほとんど交わさない。
背中に膨大な闇を背負いながら、
絶え間なく姿を変える
炎と影をただ見つめていた。 

炎は
決して明るくはないが、

電球やネオンよりも 

人の心の奥底を

自身の中にぼんやりと炙り出していた。


・・・ふと横を見ると、
ヤツは裸足のままの足を
ポリポリと掻いていた。

男「・・・靴下を・・」
ヤツ「・・・いやです。」

それがその夜、二人の最後の会話になったという・・・。



・・・さらに夜が深まり、
シカの足音と、
彼らの縄張りに入ってしまったことによる
警鐘らしき鳴き声がおさまった頃。

焚き火の音と 
渓流の音だけが支配する世界。

ハンモックに潜り込んだ途端、
せせらぎを子守唄にあっさりと眠りにおちていた。
ハンモックはその見た目よりもずっと快適だった。
結果としてカイロの世話になることもなかった。



・・・翌朝、
片つけを終えた男は
帰路を嫌がるバッグをなんとか背負い
再び小道を登っていった。

 渓流のせせらぎが
背後からいつまでも聞こえていた。


---完---
ロケ地:山梨県/一の瀬高原キャンプ場

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2 コメント

  1. 背後に広がる深い闇が、

    この場所に存在する資質や能力があるのかを、

    旅人に絶え間なく問いかけてくる。。。。。まさにこの表現がぴったりの深い闇ですよね。久し振りに行きたいなぁ。

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    1. Hさん、ご無沙汰しております。このとき二名でのキャンプでしたが、ヘカは初めて「夜が怖い」と感じました。
      お化けとかその類ではなくて純粋に暗闇におののいておりました(笑)。
      太古から、人々が夜に焚火をしていた理由を本能的に理解できたような気がします。(笑)

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