木のない所でハンモックキャンプ

By Nomadでオートキャンプ - 5月 29, 2019

ある年の3月中旬。

・・・不吉な構造物がある河川敷にその姿を現していた。
どうみてもなにかしら呪術的な意味が
込められているようにしか見えない、


禍々しい外観をもつ建造物であった。

古の伝承はいう。
「その者蒼き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。
失われし大地との絆を結び、
ついに人々を清浄の地に導かん・・・。」

・・・しかし、この金色の野に降り立ったのはヤツである。
さらに蒼き衣ではなく寝間着
(本人はジャージと主張)を着用していた。

また、ヤツは大地との絆や清浄の地に一切の興味はなく、
平地にハンモックを立てると息巻いていた。
クシャナ殿下もビックリである・・。

そのために、わざわざ冒頭の魔改造した
自作ハンモックポールを持参していたのである。

・・・しかし、この自然の摂理に逆らおうとする
ヤツの試みを神が祝福するわけもなく、
金色の野には容赦のない強風が吹きつけていた。

ハンモックはただのパラシュートと化す。
猛烈な勢いで引っ張られるポールは
何度も何度も倒れた。



そして、
ハンモックの張りを何度もテストされる過程で、

あたかもヘリオスに挑んだイカロスが墜落したがごとく、
28mmのポールが人力では抜き差しならぬほど曲がっていた。

ヤツは神の逆鱗に触れてしまったのだ。

・・・しかし、ヤツはポールの湾曲部を
信じがたい怪力で無理やり抜き、
予備ポールにしれっと交換、
設営にはゆうに2時間を要したが
神の怒りなどなかった如く
目的を完遂していた。

イカロスも予備の蝋さえもっていれば
神話の結末も変わったかもしれない・・・。

タープはヤツご自慢のDD製。



一方、本来ヤツに向けられたはずの
神の怒りたる強風は
隣りにある、
男のタフスクリーンタープ400にも直撃していた。
・・・もはや、ぐにゃぐにゃである。

もともと痛んでいたアルミフレームが
3本ともさらに曲げられていた。
当然、ヤツと違い予備のポールなどない・・・。

ままよとばかりに無理やり薪ストーブも設置。

風で揺れた幕が煙突に接触して
溶けるであろうことに、
もはや躊躇はなかった。

しかし、試運転すると、
煙が逆流し幕内に立ち込めていた。
幕が溶ける溶けない以前の問題である。

・・・いやな予感がした。
インスタ映をねらった
スパークアレスターの裏側を見ると、

タールがこってりと付着してただの
煙突蓋と成り果てていた。
天罰覿面とはこのことである・・・。

・・・幕内の灯油ストーブが
男の茶番を気だるそうに見ていた。



・・・そんな男たちの苦闘をよそに
夕暮れが迫る。
風はようやく治まっていた。

男のナタとヤツの斧。
薪割ではかなわないので、

悔し紛れにオガライトを辻斬りである・・・。
ペグハンマーでも割れるのだが・・・。



3月とはいえ夜はまだ冷える。


焚き火が頼もしい。



・・・さらに夜は更け、
都会近くといえども静かな時間。

薪の爆ぜる音が大きく聞こえる。


夜が深まり、
地響きのようなヤツのいびきが
ハンモックから賑やかに聞こえはじめる頃。

 東の空に遠慮がちに昇った三日月が
男たちを静かに見下ろしていた。

ハンモックを包んだDDタープが
微風を受けてひっそりと揺れていた。


---完---
ロケ地:一級河川敷

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