ベテラン氏と駆け出し男のギャップキャンプ②

By Nomadでオートキャンプ - 7月 04, 2020

・・・これらすべての状況を勘案した結論として、
男は車中泊を決めた。



男が屋外で使うギアは宴会用のチェアと少しの小物のみ。


いわゆる駆け出し男の十八番、寄生キャンプスタイルである。


ベテラン氏が長年練り上げて完成させた目の前の佇まいに、
男が所有する大型で仰々しいギアは出すだけ野暮なのである。
目の前に拡がるシンプルな世界に浸り、
体感してみたい気持ちも強くあった。


決して、車に積み込まれているはずの各ギアの格納場所が、
車両入替時の混乱でほぼすべて行方不明となっており、
雨の最中に探しだす根性がなかった、
という理由だけではないのだ・・・。


男が申し出た寄生スタイル提案に
ベテラン氏は怪訝な顔一つせず快諾してくれた。
・・・酩酊したおっさんへの提案ほど通りやすいものなど
この世にないという男の人生訓が、
仕事場のみならずキャンプ場でも証明された瞬間でもあった。


酒謀は古今東西最高の計略なのである。
・・・・相手が翌日に覚えていないことさえ除けばだが。


寄生キャンプと決めた後は男の行動にも迷いなどない。
椅子と物置テーブルと少々のアイテムならべて設営は完了。
正確には迷う暇すらない。


せめてもの罪滅ぼしと悟られぬよう、
あいさつ返しとしてコーヒーを淹れた。

ようやくチェアに腰をしずめ
宴会の始まりとなった。

あとはひたすら、

話し、撮り、食し、呑み、眺めた。







今の男にはそれだけで十分だった。




この奇妙に心地よい時間と空間以外、


もう何もいらないとまで感じ始めていた。


フュアーハンドランタンの淡い灯火が
やけに眩しく感じる夜は
いつもと変わることなく深まっていった。



・・・この星に生きる限り、
時間はだれにでも等しく無慈悲に降りかかる。


気がつくと、

男がこの森に到着してはや48時間が経過していた。


別れ際の握手。

※ベテラン氏撮影

お釈迦様でもないのに慈愛に満ち溢れた笑顔をした
ベテラン氏から差し出された手を見つめた。

※ベテラン氏撮影

近い未来、男の身に何かが起こって
今回が人生最後のキャンプになったとしても、
さして大きな後悔をせずにすむという
心の奥底にある安堵を悟られぬよう、
男はできるだけそっけない素振りで握りかえした。

※ベテラン氏撮影

ベテラン氏の人間としての器を
現すかのようなその日焼けした手は、
ただ力強く、大きく、分厚かった。

※ベテラン氏撮影

男の耳に、渓流の力強い音が妙に響いて聞こえていた。


・・・・完・・・・
ロケ地:椿荘オートキャンプ場

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2 コメント

  1. こんにちは!

    1、2枚目がヤバいですね!2枚目は影の中に光が射し込む描写がとても神秘的に感じます!

    5枚目はズルいです、笑。一本取られたで賞を贈呈します!

    私はブランク10か月弱を経てキャンプに行ってきましたが、疲労感強くて写真はほとんど撮れませんでした、苦笑。キャンプフォト道はまず基礎体力をつけるべき、と学びました、笑。

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    1. Taccさん疲労困憊のところコメントありがとうございます。

      記事のキャンプでもヘカは帰宅直後バタンキューでしたので、お察しします。
      てか、全部ベテラン任せでなんにもしなかった寄生キャンプであんなに疲労したのか
      意味わかりません・・・。苦笑

      125枚目を目に止めていただいたようで有難うございます。
      5枚目はベテラン氏、紅茶氏についでtaccさんもですので、いい写真なんじゃないだろうかと
      思い始めました。
      (ヘカは危うくボツにするところでした。苦笑

      兵士の教訓で
      「遠距離射撃練習するくらいなら、当てれる距離まで近づく練習をしろ」
      と言われているそうです。

      ・・・やはり普通の人間はまず体力ということなんですね。苦笑

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