天敵キャンプ

By Nomadでオートキャンプ - 12月 10, 2018


・・・10年に渡り、何の因果か男とヤツは不思議な縁でつながっていた。

かつて共に取組んだ仕事では驚異的な成果を上げていた。男とヤツのコンビプレーは社内外から常に一目を置かれる存在だったという。
その結果、周囲からは男とヤツが盟友関係にあると認識されていた。


・・・しかし、実態として当人同士は天敵関係と認識していた。なぜか好機や窮地に立つと呼吸がピタリとあうだけなのである。つまり平時に足並みが揃うことなどありえない関係なのだ。

・・・言うまでもなく、共にキャンプを始めた後もその関係性になんら変わりはなかった。
したがって、ヤツのテントがテンマクデザインサーカスTCなら、男はUJack Desert300なのである。

厳密にはヤツがサーカスTCを先に購入し、その優位性から男にも購入を勧めていたが、男は断固としてその推薦に同意しなかった。
警部たるもの盗人から情けは受けないし、馴れ合いも断わらねばならないと幼い頃どこかで学んだことがある。
とにかく、ヤツと同じテントだけはまっぴらごめんだったのだ。

当然、サーカスTCという選択肢を断った男の冬季ソロ用テント選びが困難を極めたことはいうまでもない。長い迷走と浪費の果にようやくたどり着いた先がUJackだったのである。
・・・ヤツと絡むと男はいつも人知れぬ苦労の連続なのである。


そして11月中旬のある日、ついに直接対決の日が訪れた。
 1200現着である。

競うように設営を終える。
前評判通り、ワンポールは大型トンネルテントより楽ちんである。
ただUJackはインナー付きのため、インナーなしのサーカスTCより若干時間を要した。男はまたも出鼻をくじかれた気分だっという。

男が目を離したスキにヤツは焚き火タープも接続していた。圧巻である。
ちなみにサーカスTCは直径420cm、UJackは330cmである。

いつみてもサーカスTCは優秀な幕である。
ヤツさえ使っていなければ男もオーナーになっていただろう。

 この自在金具はいつみても輝いている。

サーカスTC内に設置されたヤツご自慢のインナーセットである。
この構成で-10度のふもとっぱらで夜を超えれるという。

男のエクセレントな雰囲気を体現した小洒落たUJackである。
開口部を跳ね上げることで、小さいながらもタープをかねる優れた構造である。ガイロープをめんどくさがったため若干ヘニョへニョな姿もまたいとおかしである。

UJackの特徴の一つはフルクローズ可能なポリコットンインナーテントがついているところだろう。この構成は冬季の結露を大幅に減少させるはずである。実際、夜間は内部で灯油ストーブを焚いたが翌朝の結露はゼロであった。

寝床はスナグパック3シーズンである。

3シーズン寝袋を守護するため、向かいには冬のボディガードたるコロナSL6617氏が睨みをきかせている。
ヤツの薪ストーブには及ばないが準じた火力はある。
さらに、この恵まれた体格で車載を圧迫しまくるいう必殺技も見逃せない。

薪ストーブと違い一発点火である。
そして巨大な燃焼筒の見た目通り、灯油も大食らいである。

この日、日中気温は18℃だった。
干物になりたい諸兄ならば幕内に2時間もいれば満願成就するだろう。

※参考:翌朝800、標高30CM地点の幕内および幕外温度。火力最弱。

・・・ここで、ヤツは新兵器陣幕を投入してきた。


なんと陣幕もポリコットンである。
テンマクのコスパあふれる仕事っぷりは特筆に値する。
・・・男にとっては迷惑極まりない行為である。


このうえさらに、ドローンまで投入してきた。

・・・利用を煽っているのか拒んでいるのか判断が難しい紹介である。

ホントに飛べるのか?とおもえるスタイリッシュボーイである。

が、ちゃんと飛んでいた。
ただこの日は動作確認のみを終えて作戦完了とされた。

男は負けじと新兵器であるコーヒープレスを投入。

すかさずヤツはハートランドを取り出した。
一緒に仕事していた時は焼酎しか飲まなかったというのに、キャンプとなるとこれである。

ダメ押しはヤツ自慢のグレンスフォシュ・ブルーク斧である。
想像してみてほしい、身長180cm体重90kgの大男がこれを肩に引っさげてサイトを歩き回る姿を。
ホッケーマスクさえかぶれば、日本版13日の金曜日か実写版北斗の拳でしかない。





秋の日没は早い。


よく見ると奥にはノースイーグル社ワンポールテントが見えていた。
なぜだか男の脳裏には、アムロがオデッサ付近で見ただろう光景が浮かんでいたという。
色違い三連星である。

イーグル・マッシュは撃墜されたらしい。ガイア、オルデガの2連星のみが映る。
眼前にはオデッサ市街地の灯りが見えていた。

夕食に男が豚肉白菜鍋を準備していた。

白菜鍋の具を片付けた後、ヤツはそのままおでんを投入。デリカシーのかけらもない調理である。
だが残念なことに、寒空という調味料が恐ろしく美味に仕上げてしまっていた。

風がないため陣幕は少し退屈そうにランタンの光に照らされていた。

ふと気がつくと焚き木が爆ぜる音とともに地鳴り・・・ではなく、ヤツの重厚なイビキが真横から響いている。
・・・徹夜に近い仕事続きだったくせに半ば無理やりのキャンプだったのだ。この寒空に年甲斐もなく馬鹿者である。

・・・タープの端からふと月を見上げたとき、男は周囲の時間だけが止まってしまったような錯覚を覚えていた。ただ、もし永遠にそうだとしても特に悪いことではないのかもしれない。男はボンヤリとそんなことを感じていた。

・・・燃え尽きた焚木が崩れる音で、不思議な時間はゆっくりと動き出した。
めんどくさそうにチェアから立ち上がり、テントから毛布を取り出してヤツに近づく男の影を、月明かりがぼんやりと映していた。
遠くで鹿が啼いていた。



---完----

ロケ地:黒坂オートキャンプ場

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