・・・撤収日の朝。
神々は我々を見放さなかったようだ。
少なくとも雨は降っていない。
むしろ時間が経つに連れ、高地特有の強烈な日差しが差し込む。
朝食は昨夜の鍋を利用した雑炊である。
・・・このシエラカップがセリア製とはお天道様も気がつくまい。
もっとも、本人は購入した事自体を忘れていた。
質実剛健な焚き火台氏。重いが頼もしい大きさと強度である。
トンボ達が制空権を完全に握っている。
・・・なぜだか建築現場感が強く漂う。
ロシアSVRを欺くためには致し方ない偽装なのである・・・。
予め地面に敷いていたアンダーグランドシート氏の奮戦ぶりが伝わってくる。
その褒美として吊るし乾燥の刑である。
やはりポリコットンフライシートの裾部が集中的に濡れている。地面に接しているためズブズブだった。
キリがないので、地面から浮かせて乾燥させている。
トンボ氏は、せかせかと動きまわる我々を高みの見物と決め込んでいる。
このトンボ氏に我々が最も得意とするサボタージュ戦術を披露するべく、頻繁に休憩をおこなった。決して作業が遅かったり、帰還自体を迷っている訳ではない・・・・。
車体ドア部を利用して乾燥させたグランドシートをたたむ。写真に映っている前室床部分の厚みは2mm程度ある。母国では前室部は土足で入る想定なのだろう。
頑丈だが重いわけである。。。
これらを積み込み、ようやく撤収作業は完了した。
・・・少しホッとしてふと空を見上げた時、軽い目眩を覚えた。
・・・天国という類の存在を、見たことはないし
信じきるために必要な人間として大切な何かを喪失して久しい。
信じきるために必要な人間として大切な何かを喪失して久しい。
ただ、もしそれが実在するならば、
いま自身が立つこの光景が広がる場所なのだろう。
いま自身が立つこの光景が広がる場所なのだろう。
そんなことを頭ではなく全身が強く感じていた。
呆然と立ち尽くすだけの自分をごまかすために、
少しうつむいてタバコに火をつけた。
ようやく、それまで静かだった小鳥たちのさえずりが聞こえ始めた。
少しうつむいてタバコに火をつけた。
ようやく、それまで静かだった小鳥たちのさえずりが聞こえ始めた。
名も知らぬ小さな野花が、
まるで逃げだすかのように車へ乗り込む我々に
優しく微笑みかけていた。
まるで逃げだすかのように車へ乗り込む我々に
優しく微笑みかけていた。
車窓から遠慮がちに見上げた空は、
凛とした紺碧をただ静かにたたえていた。
凛とした紺碧をただ静かにたたえていた。
-完-
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