エリートたちのリハビリキャンプ②

By Nomadでオートキャンプ - 6月 15, 2020

翌朝。
絵に書いたような雨である。


窓からローマが見える・・
とおもったらピラミッドと雨粒が
眼前に広がっていた。

さらによく見ると人工のナイル川が
ピラミッドのそばを流れていた。
朝方、後輩2と男が泣きながら掘ったらしい。

屋外は一桁前半の気温だが車内は暖かい。

過酷な運河建設作業のため
着ていた服はぐしょぐしょである。

朝食会場は
やはりサーカスビッグ内である。
今回の布陣で、
ここがただひとつ雨に濡れない広い空間。
内部はエリート達と灯油ストーブで
ギュウギュウである。



外の運河建設に影響受けることなく、
何故かサーカス内を悠然と流れるナイル川本流。

エリートたちはこの状況を幻覚に違いないと思っていたが
なぜだか常に靴下からその実在をありありと感じられる。
ずいぶんリアルな幻覚だと思ったという。

一方で後輩2夫婦のみ
むしろ水没しない幕内のほうが違和感と
ケロッと話していたことに
男と後輩1は戦慄したという・・。

雨は終日無慈悲に降り続いた。
夕方近くになり雨が少しずつ弱くなり、

ようやく止んだ。



氾濫していた眼下のナイル河も
いつのまにか消えていた。
石器時代、
この地に小麦でも栽培していれば
歴史書の記述は世界5大文明と
なったかもしれない。

人間も乾燥処理を進めた。
ただ後輩2が全身にまとう
降雨ウイルスへの効果は疑わしい。

ビーチブルーがますます眩しい。
周囲との違和感はここに極まっていた。

気持ちの良い場内。

ようやく火をおこし、




共有しているようでしていない、
それぞれの時間が流れていた。







早春の日暮れは早く、



あっという間に闇が辺りを満たす。



遠くに街の灯り。


・・・夜更け。
サイトから離れた暗い静かな森の中で
ふと男は独り空を見上げ、
頭上に広がる星々に
遠くにいる彼の様子を尋ねてみた。

耳を澄ましても何も聞こえはしなかった。

が、まもなくして
途方もなく優しい仄かな星々の光に
体が包まれていることに気がついた。


洒落た返事を受けた気がした男は
少し苦笑いしながら
うつむき加減に何かボソっとつぶやいた後、
小さく灯る仲間のランタンの光を目印に
まだ自身が帰るべきなのだろうと思える場所へ
トボトボと戻っていった。

歩きだした男の背中を押すかのように
背後から微風が吹いていた。
悲しいほど優しい風だった。

つづく

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2 コメント

  1. こんばんは!

    豪雨の中のキャンプお疲れ様でした、笑。リアルなナイル川の絵に、普段はほぼ芝のキャンプ場利用という生温い私なぞはちょっと引き気味です、笑。

    写真メインでコメントします。1枚目、たまりませんね!この色味と空気感で現場の湿度がじめじめと伝わってきます、笑。

    10枚目でしょうか、DSC02782。「静」の絵から伝わる「動」の感覚がたまりません!まるで絵の中の雲が動いているかのような描写です。

    26枚目?DSC02828。木々のシルエットがドラマチックですね!枝・葉などのトーンの微妙な階調がたまりません!

    32枚目?DSC02877。以前紹介された絵(?)かもしれませんが改めて、とんでもない作品ですね!いやはや感服しました!前ボケがズルすぎです!

    写真を見てキャンプ行きたくなりましたが、ナイル川を見てやっぱり気が引けちゃいました、笑。

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  2. taccさん、コメントありがとうございます。
    母なるナイル川の様子を気に入っていただいたようで何よりです。
    ワニがいなかっただけ良いとします。苦笑

    普段は芝生サイト・・・、やはり北の大地は豊かですね。笑

    さて、今回は写真が多くて申し訳ないです。
    フォトサイトと違って流れを表現するとこうなっちゃいますね。苦笑

    10枚目
    このトーンはtaccさんの好みのはずと思って採用しました。笑

    26枚目
    肉眼よりよく写ってます。85mmF1.4さんの仕業です。苦笑

    32枚目
    マルチシフト撮影なるなんとかです。
    確かによく写りますので夜キャンプにはもってこいですが
    必須機能ではないと思います。苦笑

    後日ナチュログさんにもあげますー。

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