約束のキャンプ④(約束の夜)

By Nomadでオートキャンプ - 1月 06, 2019

天の川とドゴン3+1

・・・12月31日の朝。
今日は約束の夜がくる。

朝食。

チタン製クッカーをコップ代わりに
紅茶をいただく。
この金属の性質上、飲み口と取っ手が熱くなりすぎない。
つまり、食器としては誰にでも使いやすいが
クッカーとするなら炭焼き職人以外の期待には応えてくれないだろう。


外気温が上がると途端に幕内も暖かくなる。
太陽光は最強の暖房装置である。

夜の出番を待つニンニク兵達。


・・・ランチを求めて
ふたたび商店街へ。

商店街にポツリとある中華料理店。
奇をてらわねば生き残れぬ都会のラーメン店とは対極の味である。
出汁に海鮮物をつかったスープは深い甘みがある。
人知れぬ名店であることに疑う余地はない。

中華料理店裏側にはられているポスター。
こんなにも前衛的ジバニャン(?)なのだから、
作者はピカソかムンクに違いない。

商店街併設の広場。
冬の晴れ間は暖かい。


入浴施設でさっぱりしてサイトに戻る。
今日は約束の夜なのだ。

紅茶氏は


夜の仕込みを始めていた。

ローストポークなる洋風鍋である。
ハーブの良い香りが幕内に充満していた。
ハーブに防虫効果があるならば、
当分幕体に虫は寄り付かないだろう・・。



・・・大晦日など人々の営みにお構いなく、


今日もいつもとかわらぬ夕闇が近づく。



・・・そして、約束を果たすべく会場へ。
男が叔父貴と呼ぶ、
東北翁と久し振りの宴席である。

一見、礼儀正しく、ただの気の良い東北翁の実態は、
若い頃より釣りとキャンプをライフワークとし、
今も年間200泊をこなす超キャンパーなのである。
にもかかわらず、翁が己の技術と体験をひけらかすことは決してない。
ましてや他人のキャンプスタイルを侮辱する素振りなど微塵もない。
年配者にありがちなオチのないキャンプ武勇譚も皆無である。

最も恐るべきは、毎日の実践にくわえてNetまでをも駆使し、
いまでも日々の研鑽を続けているという。
現在進行系の筋金入りキャンパーなのである。

過去、男はひょんな縁からこの翁とめぐりあい、
共に年を越すことを約束していたのだ。


夕食。
・・・叔父貴お手製のセリ鍋。
東北の食べ物は人をダメにする。
・・・旨すぎるのである。

シンプルだが機能的なデスクとアイテムたち。
なぜだかすでに男のアイテムがデスク上のほとんどを占めている・・・。


ウールリッチのタープ。
叔父貴とは25年の旧友とのこと。

最近Netで調達したという薪ストーブが遺憾なく火力を発揮している。
燃焼炉外壁が放つ赤外線量は男の想像を軽く超えていた。
この暖かさの加護をうけているため至極快適であった。
気がつくと、知らぬ間に年は変わっていた。


・・・こうして、約束の夜は幕を閉じた。


サイトへ戻る時、近隣サイトから
新年を祝う幸せそうな若いカップルの談笑が聞こえていた。
声の方向に目を向けると、
少しくたびれたコールマンテントが鮮やかに輝いていた。
この寒空の下、強風で自らを多少変形させながらでも、
主人たちに暖かな新年を迎えさせたことを、
誇るかのように威厳に満ちた美しいシルエットだった。

「いかなる有名高級な道具であっても、所詮は道具にすぎないと思うんです」

30年以上あらゆるキャンプギアを使い込んできた叔父貴が、
ポツリとつぶやいた言葉が男の脳裏に浮かんでいた。


少し苦笑いしながら、男は星空に問うてみたくなった。
50億年続く星々の瞬きは何も言わず

男の心の奥底を仄かに照らしていた。

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