約束のキャンプ⑤(四日城の黄昏)

By Nomadでオートキャンプ - 1月 06, 2019

2019年1月1日。
・・・約束の夜は去った。
男の感慨に構うことなく、
いつものように金華山から日が昇った。


この4日間、
ときおり、FRPフレームのテントが変形するほどの強風(15-20m/S)と、
-3℃の低温にさらされても、
それらをものともしないドゴン3+1のシルエットはたくましく美しい。

やはりオランダ製ポリコットン幕は
太平洋側日本の冬に強い。
もはや城であった。


幕内では男と苦楽をともにしてきたヤカン氏に後光がさしていた。
・・・逆光だろうがなかろうが、煤で黒焦げ真っ黒である。

紙コップですら陽の光を浴びて眩しくみえる。


朝食は、
昨夜のセリ鍋からの雑煮である。


絶品としか味の表現が見当たらない。
胃にも財布にも優しい料理である。


昨夜まで強風にあおられて、
ほぼ転倒しっぱなしだった気の毒なチェア達。

元旦の穏やかな朝にようやくのんびりしていた。
しかしこの後、再びの強風のためアッサリと収納された。


・・・のんびり撤収というアクティビティを楽しむと、
あっというまにランチの時間である。



昨夜のローストポークを利用した洋風雑煮。
マッドシェフの腕が冴える。

・・・この城内で最後の紅茶。

風は強いものの、おだやかな日差しに恵まれ乾燥が進む。


洗い場には湯たんぽのお湯を持参した。

洗い場にはカラス兵の忘れ物。


・・・城の解体が少しずつ進む。



4日に渡って栄華を極めた四日城の跡。

ここにそんな城があったことなど、
明日には誰が知るはずもない。

舞台であり観客でもあった海と空とカラスに
請われもしないカーテンコールを済ませた。


・・・帰路についてすぐにある峠。
今年初めての日没が男を見送りに現れた。

右側遠くには元旦も廃炉作業に追われているであろう施設が見えている。

オレンジ色に染まる松。

・・・心の奥底にしまいこんだ何もかもを
優しく無慈悲に照らし出すような夕日から、

逃げ出すように車を走らせる。

ハンドルを握りながら
なんとなく点けたタバコの紫煙が、
やけに男の目にしみていた。


--完--

ロケ地:宮城県・牡鹿半島

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