KV3

サンバー サンバー サンバー(さわやか)

By Nomadでオートキャンプ - 1月 28, 2020

・・・ある年の6月、
男は平成4年式(1992)サンバーさわやか(MT/NA)と出会った。

当時の走行メーターは9万kmあたりを指していた。
何回目の9万kmかは知るすべもない。
価格は高級ファミリーテントよりも安価だった。
すぐ壊れるだろうと思っていたという。


・・・いつのまにか2020年。
元号も変わっていた。
共に駆け抜けた時間は
まもなく8年に達しようとしている。


・・・手のかかるやつだった。
表面化する現象は小さいが
根深いトラブルは毎日毎回。
今も運行前の基礎点検は欠かせない。


一方で電気系トラブルが
一度もなかったことは救いだった。
(男は深刻な電気音痴である・・・。)
30年弱にわたってハーネスや
電気スイッチ類は機能を保ったのだ。
スバル社のモノづくりの姿勢に頭が下がる。


・・・小うるさいやつだった。
5つあるドアをしめるときかならず
「ボン」
ではなく
「パッシャーン!」
と吠える。
・・・神の御業と見紛うペラペラ板金である。


街乗りだろうとなんだろうと
加速の時は必ずアクセル全開。
毎度4気筒660cc CLOVER4エンジンは
凄まじい咆哮をあげる。

車速は一向にあがらないが、
男のドライビングスピリットを
間違いなくあげていた。


・・・忠実なやつだった。
ポルシェの血族を名乗るにふさわしいRR車。
その走行性能は折り紙付きである。
したがって峠道のタイトコーナで
ドライバーが求めれば
普通にインリフトしてしまう。
横転するまでドライバーの意思にしたがうなど、
低重心スポーツカーでも簡単に真似などできはしまい。





ましてや、その貨物積載量たるや足元にも及ぶまい。


・・・結果としてこの8年、7万Kmの間に
致命的なトラブル・修理は一回のみ。

その間、男の人生にも
それなりにいろんなことが起こって、
ときには早足で、
ときには頭を低くして、
共になんとかやり過ごしてきた。





もはやサンバーと男の信頼と絶望の関係すべてを
文字で語ることなどできはしない。

ただひとつ男が言えるとすれば、
あの世でもサンバー(次はMT/スーパーチャジャー)に乗って、
三途の河キャンプ場を駆け抜けたいと
心から思っている事実だけだろう。

断りもなく先に逝った彼らも乗せれば
楽しい道程になるかもしれない。
・・・しこたま男に小言を言われる彼らには少し気の毒だが。

そのためにも全キャンプギアの軽量化を・・
と思ったとき、
近くで誰かの大きなくしゃみが聞こえて、
まだ当分時間がありそうな男は
ゆっくり進めれば良いことに気づいたという。


欲しくもないタバコに火を付けた男の脳裏に、
ある夏の高地の光景が浮かんだ。

古くくすんだ商用車の白いボディが、
あんなにも美しい姿とは知らなかった。

白く神々しい姿のまま
サンバーは男の中で永遠に走り続ける。

---完---

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2 コメント

  1. こんばんは!

    意味深な文脈全てを読み取ることが出来ませんでしたが、ヘカさんの惜しみないサンバー愛が伝わってきました。

    私も前回乗っていた車が手のかかる奴でして、購入時の金額よりも毎回の車検代の方が高いというくらい維持にお金と手間のかかる奴でした、笑。嗚呼懐かしい…惜しむべきはヘカさんのように車の知識を持って自身で対してあげたかったです。全く車知識がなくて毎度修理工場任せでしたので...

    後継者は新車で入手してまだ1年経ってもいませんが、既に手のかかる奴で、少しばかり「ニヤリ」としています、笑。いいのやら悪いのやら...

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  2. taccさん
    コメント有難うございます。ご無沙汰しており申し訳ありません。
    サンバー、ほんとに安定しない性能だったので、レジャーで週末しか乗らないヘカであれば、まさに相棒というべき人間的な存在でした。苦笑

    taccさんの後継車は新車にも関わらず手がかかる子なのですね。ヘカの後継車はそうならないことを祈るのみです・・・w

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