嵐の夜を超えて朝を迎えた。
ドゴン3+1は何事もなかったように佇んでいた。
ストームロープを固定していたペグ群も、とりだてて緩んだ様子はなかった。
・・・光が眩しい。もはや溢れているといったほうが正しい表現である。
・・・言葉を失うほど現実離れした光景にかこまれながらの撤収となった。
途中で食事と仮眠を挟みながら、ゆっくりゆっくりと撤収をした。
毎度余りに時間を要するため、
もはや撤収作業自体を不可避なアクティビティとして
割り切ることにしている。
これぞパラダイムシフト思考である。
・・・より正確に表現するなら逆ギレであろう・・・。
購入時は怪しげな鍛造ペグだと思っていた。
しかし、あの風の中でも結果として
一本たりとも任務放棄するものはなかった。
細身のため抜き差しも易い。
長い友になれそうである。
1500。
現地の痕跡を車体いっぱい残したまま帰路についた。
見上げた空には、
地元の主であろう狼型デイダラボッチ氏が見送りに現れた。
淡い紫に光る外縁が格の高さを示すのか、
ただのお洒落さんなのかを人智で計る術はない。
・・・この地域は11月にはいると冬に閉ざされる。
毎年2月の厳寒期は-20℃に達するという。
そのため我々の年内訪問は今回が最後になるだろう。
男はその日暮らしの生き方が長すぎたせいか未来や将来に関心を失って久しい。
仮に明日突然迎えが来てもさして驚きはしないだろう。
だからこそ、来年5月、
ここがどんな表情をしているかその目で見てみたい
衝動に駆られる自身に気付かないふりをしていた。
そんな男の機微を知ってか知らずか、
溢れかえる秋の日差しを浴びたすすきが
手を振るようにそよいでいた。
-完-
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